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自己PRの始まりは本当に「私の強みは…」で良いのか? [面接対策]

わかる人のために

前回の記事でコメントを受けたことについて、言いたいことは多々あるが、言わなくてもわかる人にはわかるし、わからない人には結局伝わらないと思うので、何も言わないことにした。正直もう止めようかと思ったが、わかる人のコメントを読んで、わかる人のためにもう少し続けたいと思った。それでは、気を取り直して・・・

プロポーザル

国際開発コンサルタントの仕事の受注は、発注者が指定する「プロポーザル」という技術提案書の企画競争で勝たなければならない。いわゆる注文生産ではないので、企画競争に負ければ、提案を書くための先行投資としての調査やプロポーザル作成の人件費や材料費などが無駄になり、「仕事がない」状況にも追い込まれる。

私、ちょっとプロポーザルには煩い(ウルサイ)。というか、考え方やそこにかける想いを文章にするのが好きなのである(ブログの読者からは日本語が下手と指摘されたが)。以前、国際開発コンサルティング企業では大型プロジェクトの調査業務に関するプロポーザルの全てを監修していた。現在は、大型プロジェクトではなく、個人のキャリアで勝負するプロポーザルのクオリティコントロール(品質管理)をしている。

大型プロジェクトのプロポーザルは、会社としての業務実績、業務の方針・方法、業務従事者の経歴などで構成され、ページにすると100ページを超す大作になる。章立てとなっているので、審査者はどこから読んでも良いことになっている。章立ての配点などは決まっているが、審査者によって厳しく見ないといけない章や節を重視する場合などは、実質的にそこから読み始めるだろう。

しかし、個人のキャリアで勝負するプロポーザルは5~10ページに限定される。大型プロジェクトのそれよりも1ページの重みがはるかに大きい。しかも一番始めのページにアタッチする「推薦理由書(1ページ)」と最後のページの「類似業務の経験(3ページ)」で99%が決まると言われている。中でも、推薦理由書が登竜門のようなものであり、その文章がダメだとその先に進めない感覚がある。その推薦理由書は、「推薦理由」「類似業務経験」「海外業務経験」に分かれていて、各400字程度でまとめることになっているが、「推薦理由」が全てと言っても過言ではないだろう。つまり、志望動機を重視するイケテル企業のエントリーシートのようなものだ。

審査者がすべてそうではないが、読み始めて関心が無くなったり、日本語の意味がよくわからなくなった時点でその先はほとんど読んでいないような感じである。それは、プロポーザルに不合格になった場合のデブリーフィング(評価結果フィードバック)の結果を聞けばその話し方から推測できる。

なので、この推薦理由を書く時は、対象者のキャリアを時系列的に説明するものの、できる限り伝えたい資質・能力や経験を優先的に表現していく。しかも、読み手を混乱させないような日本語を使い、最後まで飽きさせずに読み切ってもらう工夫に心血を注ぐのである。

キャリア重視のプロポーザル

数年前まではキャリア重視のプロポーザルも大型プロジェクトのプロポーザルの影響を受けて、業務従事予定者の推薦理由として、歯の浮くような意味のない美辞麗句が並び、中身とは関係なく学歴やプロジェクト実績などネームバリュー重視の言葉のオンパレードだった。当時からそんな意味のない褒め言葉は不要である、いや、減点の対象となると考えていたので、日本?の中で一番早くスタイルを変えたと思っている。人を褒めるのを止めて、そのプロジェクト業務を効果的に進めるために業務従事予定者がいかに適材適所な人材なのかを説明するようにした。

つい先日も今年の4月に入社したキャリアも実力もあるコンサルタントのプロポーザルをチェックしていた。チュニジアの科学技術研究のプロジェクト事前評価業務である。そのコンサルタントは4月以降、数件のプロポーザルを提出していたが、そのクライアントが発注する海外プロジェクトの評価業務実績がないという理由で選考されなかったことをデブリーフィングで知った。

そのコンサルタントは確かにそのクライアントの海外でのプロジェクト評価業務の経験はなかった。しかし、海外から来る研修員(公務員)に対してプロジェクトの計画立案、進捗管理、評価手法を教え、研修員が帰国後にその国でプロジェクトを提案できるようなトレーニングをこれまでに何度も請け負っていた。しかも、その(落とされた)クライアントからである。海外での評価業務の経験はなくとも、評価手法については深く理解しているし、対象者との合意形成を図りながらプロジェクトの計画を確認していく作業には十分に力を発揮できる。何よりも、「良い仕事」をしてくれる予感があるので、できるだけ早いタイミングで仕事を受注してほしかった。

そこで考えたのは、やはり「思ったよりも相手に伝わっていないようだ。あまりにも伝えたいことが先行してしまい、相手が本当に知りたいと思うこの人の実力や業務の実施能力が伝え切れていない。もっとバランスよくこの人の全体を見せてから、その中でも強調すべきことをアピールしても良いのではないか?そしてその強調すべきことは目立つことではなく意味のあることでないといけない。」ということだった。

まずは、これまで先行させてきた「目立つ」海外業務についてはクライアントによるプロジェクトの評価業務ではなかったため、強調するのは止めにした。バランスよく全体を見せるために、専門性の幅の広さ、英語・フランス語の対応力、そして研究所での勤務経験から研究成果を取りまとめる調整能力を見せることにした。

そして、プロポーザルとして配点の高い「類似業務3件」については、あえて先ほどあげた国内での研修業務をトップに持ってきた。一般的には海外業務のプロポーザルを書く場合に国内の業務経験で勝負するのはリスクが高いと言われている。いくら国内業務を頑張ってやっても、海外業務で通用するかどうかは疑問なところが大きく、高い評価を望めないからである。しかし、この業務を進めるための「しっかりとした理論を持ち」「周囲の合意形成を図りながら」「ドキュメントや報告書をまとめる」などのチカラを最も表現できるのは、やはりこの業務だった。

しかも、そのクライアントはこの研修業務でのこの人のパフォーマンスを高く評価していた。考え方によっては、海外から来る研修員に対するトレーニングの空間は言わば「外国」であり、このパフォーマンスは本当の外国でも通用すると確信していた。

結果、見事に受注することができた。良い仕事ができるように外国で頑張ってほしいと思う。

自己PRの「始まり」パターン

さて、今日は自己PRの「始まり」について考えてみたい。これまでも自己PRについては、何度も書いてきた。他人との差別化を図ることができる自分の強みとその特徴を表明しよう!と言ってきた。いろんなマニュアル本を見ても「…まずは自分の強みを話し、その後にそれを表すエピソードを詳しく話す…」というようなことが書いてある。そのマニュアル本の考え方には賛成できないが、やはり「強み」を先に話すということでは共通しているところがある。

先日、模擬面接をしていて強く感じたのだが、本当に自己PRの始まりは「私の強みは…」で良いのだろうか?ということである。いろんな強みを聞いたが、どうも当たり前のことだったり、あるいは、たった一つのエピソードから抽出された偶然だったり、「その続きを聞きたい!」と思わないのである。

それでいろいろ考えてみたところ、先ほどの私の国際開発コンサルタントとしてプロポーザルの書き方に辿り着いた。…「思ったよりも相手に伝わっていないようだ。あまりにも伝えたいことが先行してしまい、相手が本当に知りたいと思うこの人の実力や業務の実施能力が伝え切れていない。もっとバランスよくこの人の全体を見せてから、その中でも強調すべきことをアピールしても良いのではないか?そしてその強調すべきことは目立つことではなく意味のあることでないといけない。」…の「…もっとバランスよくこの人の全体を見せてから…」の部分である。

自己PRへの自己紹介の取り込み

そう。まずは全体をバランスよく見せるということが重要なのだ。そこで少し思い切った提案をすると、「私の強みは…」と言う前に、自己紹介を簡単にすればどうだろう?以前のブログで書いたが、自己紹介と自己PRは違う。「自己紹介してください」と言われても、皆さんは自己PRしてしまう就活病にかかっている始末である。その逆を考えてみる。「自己PRしてください」と言われて、少しだけ前置きとして自己紹介するのはどうだろうか?自己紹介もひとつの自分を売り込む手段であるからだ。

例えば…「まず、少しだけ自己紹介させてください。私は大阪出身で小さい頃からスポーツと音楽が好きで、それを通じて多くの友人に恵まれました。それらの友人とのコミュニケーションを大切にしたいとの想いから大学ではコミュニケーションを勉強するためにR大学の社会学系学部に入り、社会心理学を専攻しております。大学では留学、音楽のサークル活動、ゼミ活動などに積極的に取り組み充実した学生生活を送ることができました。現在は、人のためになる仕事そして達成感のある仕事ということを軸にして就職活動を進めております。それでは、PRに移らせていただきますと、これまでの人生を振り返りますと、やはり自分の強みは・・・」

というPRはどうだろう。30秒もかからない。約2分間のPRが許されるとすれば、30秒の自己紹介があっても良いと思わないか?この自己紹介導入によって以下のような効用が考えられるからである。
(1)違和感なくまずは自分の事実を話すことで極度の緊張から開放される。
(2)審査者が書類を確認しながら経歴などを目で追って、これから話すことをメモに取る準備をする時間を与えることができる。
(3)自己PRの本体部分の説明の前提として、学生時代を簡単にイメージさせることができる。
(4)自分を広く紹介することで、いろんな審査官がいろんな視点で話を聞きたいと思うようになる(面接でのコミュニケーションの材料が揃う)。
(5)集団面接などの時間が限られている場合でも、短時間に多くの材料を提供することができる。

そして次に自己PRで大切になるのは、プロポーザルの書き方から引用した「…強調すべきことは目立つことではなく意味のあることでないといけない…」という部分についてである。これについては、次回「自己PRを補足する実績やエピソードはピカピカじゃないといけないの?」と題して書く予定にしている。いや、書くとしたらの話であるが…

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2009-07-15 23:24  nice!(1)  コメント(7)  トラックバック(0) 
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コメント 7

Meg

進路が決まりました。決める上でこちらのサイトのアドバイスに大変お世話になったので、お礼が言いたくて書き込みしました。私は就職とはまたちょっと違う道を選んだのですが、志望理由を作っていく中で、このページを参考にして適宜変えて完成させたもののほうが、相手に納得してもらえました。そして、これは予想外だったんですが、その過程でちゃんと納得して選んでる自分がいました。期待をかけ、励ます姿勢はとってもありがたかったです。でも、私は管理人さんのような立派な職業でも、文章の中に出てくる優秀な学生さんにもなれないんだろうなと思います。『ハゲタカ』の話が出ましたが、むしろ映画『この自由な世界で』(監督ケン・ローチ)の方が自分に近いんじゃないかなと感じたりしました。それでも、自分で選べたのでさっぱりした気持ちでいっぱいですし、決める前は不安だったのに意外とやる気にもあふれています。
最後に、お忙しい中、コメントを読んで頂きありがとうございました。
by Meg (2009-07-17 21:50) 

CARLOS

ここには久しぶりに書き込ませてもらいます。
今回のこの文章、まさに僕自身に語りかけられているような内容でした。
自身をよりよくわかってもらうために全体をイメージしてもらう。そして強調すべきことは目立つことではなく意味のあること。
このことを最近意識しながら面接に臨んでいたので今回のブログはまさにドンピシャリでした!またひとつ成長できるような気がします。
僕は社会に出るまでにまだまだ成長したいので、そのヒントをくれるネッピーさんのブログの更新これからもお願いします!!お願いします!


by CARLOS (2009-07-18 10:30) 

ネッピー

Megさん
コメントいただきありがとうございます。自分らしい道がしっかりと見つかったようで良かったですね。おめでとうございます。「自分らしくアレンジすることで本当の自分らしさが見えてきた」というところでしょうか。素晴らしいですね。
実は私・・・この世の中で一番嫌いなのが「仕事」、二番目に嫌いなのが「勉強」です。そんな自分が会社を経営するなんて思っても見なかったですし、周りでも未だに信じていない人もいると思います。この世の中何が起こるかわかりません、いや何を起こせるかわかりません。日本人もなかなか捨てたものではありません。どんな世界であっても夢と希望を語れる人として幸せになってください。楽しみにしております。
by ネッピー (2009-07-18 10:46) 

ネッピー

CARLOSさん
コメントありがとうございます。「タイムリーな言葉」ってありますよね。私も方向性を変えたいと考えた時にこんなタイムリーな言葉を聞きました。
「仕事とは何か、職場とは何か、全ての雑念を振り払い、己の内なる心に問いかけてみよ。仕事はどこでやるかではない。何をやるかだ。」
実は続けようかどうか迷っていますが、書くときはいつも読者の言霊(コトダマ)になるように心を尽くしたいと思います。

by ネッピー (2009-07-18 11:18) 

SeintoSeiya

こんにちは、いつもブログ拝読して日々勉強させていただいています。
初めてコメントさせていただきます。
数社から内定をいただきながらも、このブログ等で良い刺激を受け、自分の本当の幸せ探しのために現在も就職活動を継続している大学4回生です。
私自身も面接を重ねる中で、自己PRの始まりがいつも「私の強みは…」で始まることに少し違和感を感じていたところでした。今回の「…もっとバランスよくこの人の全体を見せてから…」というフレーズにとても納得しました。強みをPRするだけでなく、自分自身の21年間を少し紹介するだけで、ぐっとその人をイメージしやすくなると思いました。次の面接のときは心がけてみようと思います!
これまでの自己PRにこだわり過ぎることなく、柔軟に自己PRを進化させて、一生に一回の新卒の就活を通じてもう少し自分と向き合ってみようと思います。
本業がお忙しい中、日々私たちに自分と向き合うきっかけを与えてくだりありがとうございます。

by SeintoSeiya (2009-07-19 01:45) 

ネッピー

SeintoSeiya さん
 コメントありがとうございます。就活を続ければ続ける程、間違いなく人間は成長します。どんなふうに成長するかと言うと、来年の4月からスタートダッシュを決めれる社会人としてのチカラもそうですが、それよりも自分を認めるチカラと自分をコントロールするチカラがつきます。
 自分を認めるチカラとは、自分のイケテナサを素直に認めて、自分を進化させようとするチカラです。もうひとつの自分をコントロールするチカラとは、自分がどのような時にチカラを発揮できて、どういうチカラの限界があり、どこでチカラを蓄えることができるのかを知ることで、チカラの出し入れや押し引きを加減できるようになります。
 これらのチカラがないとどうなるかわかりますか?そうです。3年以内に会社を辞めたり、つぶれたり、腐ったり、無視されたり、辞めさせられたりします。
 ただ闇雲に就活を続ければ良いということではありませんが、少なくとも既に就活を終えて、「今しか出来ないこと」を勘違いしている人よりも幸せになれる確率が高くなります。1分1秒を大切にして、チャレンジを続けてください。
by ネッピー (2009-07-19 19:02) 

学歴の書き方

いつも楽しく観ております。
また遊びにきます。
ありがとうございます。
by 学歴の書き方 (2010-08-01 22:53) 

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